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難病と就労

難病社員の復職ロードマップ、「人事だけ」では組めない構造的な理由

難病のある社員の復職ロードマップは、人事担当者おひとりで組み立てられるものではありません。結論から言うと、休職から復職までの具体的な計画を立てるには、「主治医の意見(診断書・復職可否の見立て)」「本人が希望する働き方」「職場側の受け入れ体制」という3つの情報がそろって、はじめて実行可能な形になります。この記事では、なぜこの3つがそろわないと計画が止まってしまうのか、そして人事担当者だけで抱え込まずに進める方法を整理します。

「主治医の意見書、どう読めばいいか分からない」で止まる人事担当者

復職支援の相談を受けていてよく聞くのが、「主治医の意見書をどう解釈すればいいか分からない」という声です。人事担当者は医療的な知識を十分に持っているわけではないことが多く、意見書に書かれた「配慮事項」や「就業上の措置」をどこまで具体的な業務調整に落とし込めばいいのか判断がつかないまま、本人の希望とのすり合わせで止まってしまうケースが少なくありません。意見書は本人の状態を医学的な観点からまとめたものであり、そこに「本人が実際にどう働きたいか」という情報が十分に書かれているとは限らないため、人事担当者は2つの情報源(医学的な見立てと本人の意向)を橋渡しする役割を、専門的なトレーニングなしに担うことになりがちです。

復職ロードマップに欠かせない「3つの情報」

具体的な復職計画を組むには、次の3つの情報がそろっている必要があります。

  • 主治医の意見:診断書や復職可否の見立て。就業上の配慮事項(勤務時間の制限、業務内容の制約、通院への配慮等)が含まれることが多い
  • 本人が希望する働き方:どのくらいの勤務時間から始めたいか、どの業務なら対応できそうか、通院とどう両立したいか、といった本人側の意向
  • 職場側の受け入れ体制:配置転換の可否、業務量の調整余地、周囲のフォロー体制がどこまで用意できるか

このうちどれか1つでも欠けたまま計画を進めると、「主治医の意見だけを反映した机上の計画」や「本人の希望だけを聞いて職場の実情と合わない計画」になりやすく、結局は現場で機能しないという結果になりがちです。3つの情報を突き合わせ、矛盾があれば調整する――このプロセスそのものが、復職ロードマップ作成の中心的な作業だと言えます。

なぜ「一度決めたら終わり」にできないのか――難病特有の「症状の波」

難病は症状に波があることが多く、休職前・復職直後・復職から数か月後で、本人の状態が同じとは限りません。体調が安定している時期に立てた計画が、症状が悪化した時期にはそのまま機能しなくなることがあります。そのため、復職ロードマップは「一度作って終わり」にできるものではなく、体調の変化に応じて継続的に見直す前提で運用する必要があります。この「計画を作ること」と「計画を運用しながら見直し続けること」は別の作業であり、後者にこそ人事担当者だけでは対応しきれない難しさがあります。

国の両立支援ガイドラインはあるが、実務の細部は「要確認」

厚生労働省には「治療と仕事の両立支援ガイドライン」という枠組みが存在します。ただし、具体的な様式の細部や対象となる制度・要件の数値については、本記事の執筆時点で確証の取れる一次情報が手元になく、断定的な記載は避けています。企業ごとに置かれている状況(従業員規模、産業医の有無、疾患の種類等)によっても対応の細部は変わるため、具体的な様式や助成制度の要件については、労働局やハローワークなどの公式窓口、社会保険労務士等の専門家に確認しながら進めることを強くおすすめします。

よくある失敗:「意見書の指示だけ」で計画を決めてしまうケース

相談を受けていて感じるのは、真面目に対応しようとする人事担当者ほど、主治医の意見書に書かれた指示を「守るべきルール」として受け止め、その通りに計画を固定してしまいがちだという点です。意見書は医学的な観点からの見立てであり、本人が実際にどう感じ、どう働きたいかという情報までは書き切れていないことが多くあります。意見書の内容だけで計画を決めてしまうと、本人にとっては「自分の希望を聞かれないまま決められた」という受け止めになり、かえって復職への意欲が下がってしまうことがあります。逆に、本人の希望だけを優先して職場の受け入れ体制を確認しないまま計画を進めると、現場で「そんな配慮は難しい」という反発が起き、計画が振り出しに戻ってしまうこともあります。3つの情報のどれか1つだけに寄りかからず、突き合わせながら調整するプロセスを省略しないことが、遠回りに見えて結局は一番早く着地する道筋だと筆者は考えています。

「本人と企業のあいだ」に立つ専門家という選択肢

ここまで見てきたように、復職ロードマップづくりには医療的な情報の読み解き、本人の意向のヒアリング、職場の受け入れ体制の調整という、専門性の異なる3つの作業が必要です。これを人事担当者おひとりで担うのは現実的に負荷が大きく、途中で止まってしまう理由にもなります。

「からだとこころのはたらく伴走支援」は、看護師・公認心理師としての臨床知識をもとに、主治医の意見書を読み解き、本人の希望と職場の受け入れ体制のあいだで実務伴走を行うサービスです。個人面談から企業側との同席、必要に応じた受診同行まで、一般的なリワークの型にとどまらず現場に踏み込んで対応する点を特徴としています。

このサービスは2026年7月に事業の軸として位置づけたばかりで、導入実績や成功事例はまだこれからです。筆者は公的職業紹介機関で持病・障害のある方の就職支援を担当する中で、本人と企業の板挟みになる場面を何度も見てきましたが、そうした場面でこそ第三者の専門家が間に入る意味があると感じています。実績を誇張して伝えることはせず、まずは「本人と企業のあいだに立つ専門家という選択肢がある」ことを正直にお伝えしたいと思います。

【こんな企業には】規模・状況別のヒント

  • 産業医がいない中小企業の人事担当者には:意見書の医学的な読み解きを社内だけで担うのは負担が大きいため、外部の看護師・公認心理師による伴走を検討する余地があります。まずは今抱えている1件の状況だけでも相談してみることから始められます。
  • すでに休職者を抱えていて対応に迷っている企業には:3つの情報(主治医の意見・本人の希望・職場の受け入れ体制)のうち、どれが不足しているかを整理するところから着手すると、次に何をすべきかが見えやすくなります。
  • まずは情報だけ知りたい経営層には:導入を即決する必要はなく、どんな伴走が可能かを聞くだけの相談も可能です。実績を強調しない等身大の説明を心がけているため、率直に現状を共有いただく形で構いません。

まとめ:復職ロードマップは「つなぐ役割」があってはじめて機能する

難病のある社員の復職ロードマップは、主治医の意見・本人の希望・職場の受け入れ体制という3つの情報がそろい、かつそれを継続的に見直す運用があってはじめて機能します。人事担当者おひとりでこの3つをつなぎ続けるのは負荷が大きく、途中で止まってしまうことも珍しくありません。「からだとこころのはたらく伴走支援」では、看護師・公認心理師が本人と企業のあいだに立ち、意見書の読み解きから継続的な調整まで実務伴走を行っています。サービスは始まったばかりですが、抱え込まずに相談できる選択肢として知っていただけたら幸いです。

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