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難病と就労

難病のある応募者の面接で聞くべきは「症状」ではなく「配慮」——中小企業の採用担当者が知っておきたい境界線

難病のある応募者を面接するとき、症状の詳細を聞き出す必要はありません。聞くべきは「働く上でどんな配慮があれば力を発揮しやすいか」です。障害者雇用促進法では、募集・採用の段階でも合理的配慮の枠組みがあり、本人から申出があれば、過重な負担にならない範囲で事業主が必要な措置を講ずることが求められます。善意やサービスというより、法律上の枠組みの中で考える話です。まずこの結論をお伝えしたうえで、なぜ現場でこの境界線が曖昧になりやすいのか、具体的に何を聞けばいいのかを整理します。

なぜ「配慮の話」と「詮索」の境目が曖昧になるのか

中小企業の採用担当者から、「難病のある応募者が来たとき、面接で何を聞いていいのか分からない」という声を聞くことがあります。症状について詳しく尋ねるのはプライバシーの侵害になりそうで気が引けるし、かといって何も聞かずに配慮を用意するのも現実的ではない——この板挟みが、面接そのものへの苦手意識につながっているケースは少なくありません。

筆者は公的職業紹介機関で持病・障害のある方の就職支援を担当する立場で約8年、面接に同席したり、企業側への説明に立ち会ったりしてきました。その経験から感じるのは、この戸惑いの多くは「症状の詳細」と「働く上で必要な配慮」を分けて考える視点があれば、かなり整理できるということです。前者はプライベートな医療情報であり、企業が根掘り葉掘り聞く必要はありません。後者は業務を円滑に進めるための実務的な情報であり、むしろ確認しておくべき内容です。この二つを分けて質問を組み立てるだけで、面接の空気は大きく変わります。

合理的配慮は「募集・採用時」にも対象になる

ここで押さえておきたいのが、障害者雇用促進法における「合理的配慮の提供義務」の範囲です。同法第36条の2では、募集・採用に当たり、障害者からの申出により、障害の特性に配慮した必要な措置を講ずることが定められています(厚生労働省Q&A、https://www.mhlw.go.jp/tenji/dl/file13-04.pdf。合理的配慮指針も同趣旨)。つまり、採用が決まってから初めて考える話ではなく、募集・採用の過程でも対象になりうる枠組みです。あわせて第36条の3では雇用後の合理的配慮が、第36条の4では措置を講ずる際の本人の意向の尊重と、採用後の相談に応じる体制整備等が定められており、面接でのやり取りは「その後も続く一連の対応」の入り口になりえます。

なお、これらの規定にはいずれも「事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という除外規定が付いています。つまり、企業に無制限の対応を求めるものではなく、実務上できる範囲での調整を前提とした制度です。この点を正しく理解しておくと、「完璧な対応をしなければならない」という過度なプレッシャーを感じずに済みます。

また、この法律が対象とする「障害者」は、障害者手帳を持つ方に限定されません。厚生労働省のQ&Aでは、難病の患者に対する医療等に関する法律に基づく医療受給者証の提示により確認できる場合もあると示されています。手帳や受給者証の有無だけで機械的に切るのではなく、職業生活上の制限の有無を踏まえ、この法律の枠組みの中で考えることができます。

面接で聞くべき3つの質問

具体的に、面接では何を聞けばよいのでしょうか。症状の詳細ではなく、次のような「働き方に関わる配慮」を軸に質問を組み立てることをおすすめします。

  • 通院や体調管理のために、勤務時間や休憩の取り方で配慮してほしいことはあるか
  • 業務内容や作業環境で、負担を減らせると助かることはあるか(例:立ち仕事の時間、長時間の外出、特定の環境刺激など)
  • 体調に波がある場合、その日ごとにどう伝えてもらえると企業側が対応しやすいか

これらはいずれも「症状は何か」ではなく「どう働きたいか・どう配慮してほしいか」を尋ねる質問です。本人にとっても答えやすく、企業にとっても採用後の実務調整にそのまま活かせる情報になります。

さらに、これらの質問を面接の後半でいきなり切り出すのではなく、面接の冒頭で「体調や通院面で配慮してほしいことがあれば、遠慮なく教えてください」と一言添えておくだけでも、応募者の緊張はかなり和らぎます。質問の内容そのものと同じくらい、「聞かれる側が身構えずに答えられる空気を作る」ことも、面接設計の一部だと捉えておくとよいでしょう。回答は面接メモに残しておき、選考結果にかかわらず本人の同意なく他部署へ共有しないという扱いも徹底しておきたいところです。

応募者本人も、実は手探りであることが多い

もう一つ知っておいていただきたいのは、応募者本人も自分の就労可否や必要な配慮について、必ずしも明確な答えを持っているとは限らないということです。診断されてから間もない場合や、症状の波が読みにくい場合、「働きながら少しずつ分かってくる部分もある」というのが実情に近いことも多くあります。

そのため、面接官が「正解」を求めるように質問攻めにするのではなく、「一緒に働き方を探っていきましょう」という姿勢で臨むだけで、応募者が感じる緊張は大きく和らぎます。これは特別なスキルというより、姿勢の問題です。マニュアル通りの一律対応を目指すよりも、一人ひとりに合わせて聞き方を調整する前提で臨むほうが、結果的にお互いにとって話しやすい面接になりやすいと感じています。

中小企業だからこそ気をつけたい点

大企業であれば産業医や専門部署が対応の相談先になることもありますが、中小企業ではそうした体制が整っていないケースも多くあります。相談先が社内にいないまま、採用担当者一人が判断を抱え込んでしまう状況は珍しくありません。

このような場合、外部の助成金制度(障害者を雇用する際の各種助成金など)を活用できる可能性がありますが、対象要件や金額は制度・自治体・企業規模によって異なるため、正確な内容は必ずハローワークや自治体の窓口、社会保険労務士等の専門家に確認してください。本コラムでは具体的な金額や対象要件を断定的にお伝えすることはできません。

また、社内に相談先がいない場合でも、採用担当者一人がすべてを判断する必要はありません。ハローワークの障害者専門窓口(難病患者就職サポーターを含む)は、企業側からの相談にも対応しています。面接前の段階で「こういう応募者が来た場合、どう対応すればよいか」を相談しておくだけでも、当日の面接に落ち着いて臨みやすくなります。採用後に配慮の内容を見直したいときも、同じ窓口や外部の専門家に継続して相談できる関係を作っておくと、担当者が一人で抱え込む状況を避けやすくなります。

まとめ

難病のある応募者の面接では、症状そのものではなく「働く上でどんな配慮があれば力を発揮しやすいか」を聞くことが基本です。障害者雇用促進法第36条の2では、募集・採用時にも、本人からの申出を起点に合理的配慮の措置が求められ、過重な負担がある場合は除外される仕組みも用意されています。だからこそ面接では、配慮を申し出しやすい空気をつくることが実務上のポイントになります。応募者本人も手探りであることが多いという前提に立ち、「一緒に探る」姿勢で臨むことが、結果的にお互いにとって話しやすい面接につながります。

面接の場での対応は、採用後の職場定着にもそのままつながっていきます。面接時点で「配慮してほしいことを言っても大丈夫だった」という経験は、応募者にとって入社後も体調について相談しやすい関係の土台になります。逆に、面接で症状について踏み込みすぎた質問をされたり、逆に何も聞かれずに配慮のないまま採用が進んだりすると、入社後に「本当は言いにくい」という空気が固定化してしまうこともあります。面接は単なる選考の場ではなく、その後の働き方についての最初のすり合わせの機会でもある、という捉え方をしておくと、日々の採用実務の中でも判断に迷いにくくなるはずです。

この記事が気になった方へ

  • 「今度の面接で何を聞けばいいか整理したい」という採用担当者の方は、本人と企業のあいだに専門家が入って伴走する「からだとこころのはたらくコンサルティング」もひとつの選択肢です。面接時の配慮の組み立てから、採用後の職場調整まで一緒に整理できます
  • 助成金や制度の正確な要件を確認したい方は、お近くのハローワークまたは自治体の窓口にお問い合わせください
  • 難病のある方ご本人で、面接での伝え方に不安がある方は、ハローワークの難病患者就職サポーター等の相談窓口も活用できます

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。制度・助成金の要件は公式窓口・専門家にご確認ください。

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