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難病と就労

難病・病気をもってるわたしが「自分らしく働く」は実現できる|受容のステップと就労支援の使い方

難病を発病した時点で退職する人は約7割に上るという調査報告があります(※1)。

「もう働けないかもしれない」「将来が不安で眠れない」。診断直後にそう感じることは、決して弱さではありません。でも、正しい知識と支援を知ることで、その先の道は大きく変わります。

この記事では、難病を抱えながら働き続けるために知っておきたい3つのステップを、心理学的な視点と具体的な制度情報をあわせてお伝えします。

難病と就労|なぜ早期に動くことがカギなのか

難病の診断は、身体的な変化だけでなく、「自分はこれからどう生きるのか」というアイデンティティへの問いを突きつけます。その衝撃が大きいほど、就労という現実的なテーマに向き合えなくなるのは当然のことです。

しかし、診断後に仕事から離れてしまうと、再就職のハードルは時間とともに上がる傾向があります。早い段階で「働くことへの希望」を言語化し、支援につながることが、長期的な就労継続に大きく影響します。

焦る必要はありません。ただ、「いつかは動こう」を「今日から少しだけ」に変えることが、その後の働き方を大きく左右するのです。

ステップ①|コーンの受容理論を知ると「今の自分」が楽になる

ステップ1:コーンの受容理論
ステップ1:コーンの受容理論

心理学者コーン(Cohn, 1961)は、障害や疾患を受け入れるプロセスにはいくつかの段階があると提唱しました(※2)。

  • ショック——「なぜ私が」という衝撃と現実感のなさ
  • 否認——「きっと誤診だ」「なんとかなる」と信じようとする
  • 怒り・悲しみ——「なぜ自分だけ」という感情があふれてくる
  • 適応の試み——できることとできないことを探り始める
  • 受容——現実を認めつつ、自分なりの生き方を模索する

重要なのは、このプロセスは直線的ではなく、行ったり来たりするものだということです。また「受容」は「諦め」ではありません。現実を認めた上で、自分の可能性に目を向ける姿勢のことです。

「今、怒りや悲しみの段階にいる」と気づくだけで、「自分はおかしくない」と安心できることがあります。まず、今の自分がどの段階にいるかを、そっと確認してみてください。

ステップ②|制度を味方につける——手帳がなくても使える支援がある

ステップ2:就労支援制度
ステップ2:就労支援制度

「障害者手帳がないと就労支援は使えない」と思っていませんか? 実はそうではありません。

難病患者は、障害者手帳の有無にかかわらず、以下の就労系福祉サービスを利用できます(※3)。

  • 就労移行支援(最大2年間、職業訓練から就活まで一貫してサポート)
  • 就労継続支援A型・B型(働きながら訓練、工賃あり)
  • ハローワークの難病患者就職サポーター(症状の特性を踏まえた就労相談・求人紹介)
  • 難病相談支援センター(各都道府県設置、就労相談に対応)
  • 障害者就業・生活支援センター(就労と生活の両面サポート、全国337か所)

これらは障害者総合支援法の対象疾病(2025年4月時点で376疾病)に該当すれば利用でき、指定難病でなくても対象になる場合があります(※4)。

また、2024年4月からは合理的配慮の提供が民間企業にも法的義務となりました(※5)。手帳がなくても、難病であることを伝えれば、通院日の休暇取得、時短勤務、業務内容の調整などを会社に求める権利があります。

「制度を使う=弱くなる」ではありません。自分の状態を社会に伝え、正当なサポートを受ける権利の行使です。

ステップ③|支援につながると、就労継続の可能性が大きく上がる

ステップ3:専門的就労支援
ステップ3:専門的就労支援PDFを開く

専門的な就労支援を受けることで、就労継続の可能性は大きく変わります。

就労移行支援を活用した難病患者の就職率は約44.8%(2021年度)に上ります(※6)。また、国際的なRCT(ランダム化比較試験)のメタ分析では、伴走型就労支援(IPSモデル等)を受けたグループは、通常の職業紹介のみのグループと比べて就業継続率がオッズ比1.78〜3.3倍高いことが示されています(※7・※8)。

支援が有効な理由は、単に「仕事を探してもらえる」からではありません。

  • 主治医・職場・支援機関の三者連携で無理のない就労条件を整えられること
  • 体調の波を前提にした働き方をデザインできること
  • 「働けない期間」があっても再出発しやすい関係性が残ること

これらが組み合わさることで、長く働き続ける土台がつくられます。一人で抱え込まず、チームで支えてもらう仕組みに乗ること。それが、長く働き続けるための最大のコツです。

【厚生労働省 公式情報・ガイドライン】 各種支援制度の概要や、事業者向けの雇用管理に関する詳しい情報は、厚生労働省の公式ページをご確認ください。

[厚生労働省|難病患者への就労支援施策](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000146556.html)

今日からできる一歩|主治医に「働きたい」を伝える

今日からできる一歩:主治医への相談
今日からできる一歩:主治医への相談

就労支援のプロとして、最初の一歩としておすすめしていることがあります。それは、次の受診時に主治医へ「働くことへの希望」を伝えることです。

「働けますか?」という質問ではなく、「こういう形で働き続けたいのですが、医療的にどんな配慮が必要か一緒に考えてほしい」というスタンスが、より具体的な連携につながります。

主治医から就労支援機関への紹介状や意見書が出ることで、ハローワークや支援機関との連携がスムーズになります。なお、指定難病の方は「療養・就労両立支援指導料」として、主治医が職場連携を行う仕組みも診療報酬上整備されています(2020年〜)。

まとめ

難病後に仕事を失うリスクは確かに高い。でも、早期に支援につながることで状況は大きく変えられます。

  • コーンの受容理論を知ることで、今の自分の状態を客観視できる
  • 就労支援制度は手帳がなくても使えるものが多く、利用することは弱さではなく権利の行使
  • 専門的支援を受けたグループの就労継続率は、受けなかった場合と比べて有意に高いことが国際研究でも示されている

まず主治医に「働きたい」という気持ちを伝えることから、今日を始めてみてください。

あなたの「働きたい」という気持ちは、弱さではなく、未来への意志です。

著者について

安原奈那(やすはら なな)/makes momo

看護師・公認心理師・キャリアコンサルタント。岡山県を拠点に、難病・慢性疾患・こころのつらさを抱えながら働く方へのEAP(従業員支援プログラム)サービスを提供。公的支援機関での相談員経験をもとに、医療と就労の橋渡しを専門とする。

参考文献・出典

※1 障害者職業総合センター「難病患者就労実態調査」

https://www.nivr.jeed.go.jp/option/nanbyo/survey.htm

※2 Cohn, N. (1961). Understanding the process of adjustment to disability. *Journal of Rehabilitation*, 27, 16–18.

※3 厚生労働省「難病患者の就労支援」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000146556.html

※4 厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」(2025年4月改正、376疾病)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hani/index.html

※5 障害者差別解消法改正(令和3年法律第56号、2024年4月施行)

※6 東京都福祉局「令和3年度就労移行等実態調査」

※7 Modini, M. et al. (2024). Individual Placement and Support (IPS) beyond severe mental health: An overview review and meta-analysis of evidence around vocational outcomes. *Preventive Medicine Reports*, 44.

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11225006/

※8 Hellström, L. et al. (2018). Multidisciplinary Intervention and Acceptance and Commitment Therapy for Return-to-Work and Increased Employability among Patients with Mental Illness and/or Chronic Pain: A Randomized Controlled Trial. *International Journal of Environmental Research and Public Health*, 15(11), 2424.

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6266920/

本コラムの情報は各省庁・学術文献に基づいていますが、個別の状況については専門機関へご相談ください。

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