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難病と就労

「本人の希望」と「会社の事情」板挟みの人事担当者へ:一人で抱えなくていい理由

本人の希望を叶えたい。でも会社の人員体制や業務量も守らなければならない――この二つを一人で背負い込んでいる人事担当者は少なくありません。結論から言うと、この板挟みは担当者個人の力不足や気配りの足りなさが原因ではなく、「本人の代弁者」と「会社の代弁者」という、本来は別の人が担うべき二つの役割を一人で兼任しようとすることから生まれる、構造的な苦しさです。必要なのは、より強い気合いや配慮ではなく、両方の言い分を整理する第三者の存在です。

なぜ人事担当者は板挟みになりやすいのか

難病や慢性疾患のある従業員への対応では、人事担当者が本人と直接やり取りする窓口になることが多くあります。本人の希望を丁寧に聞けば聞くほど、「会社としてどこまで応えられるか」の判断が重くのしかかります。逆に、人員体制や業務の都合を優先すれば、今度は「本人の気持ちを置き去りにしているのではないか」という後ろめたさが残ります。

どちらの立場に軸足を置いても、板挟みそのものが消えるわけではありません。本人側の代弁をしようとすれば会社の事情との摩擦が生まれ、会社側の代弁をしようとすれば本人との信頼関係に影響が出る――このジレンマは、本人と会社の間に立つ役割を一人で担っている限り、構造的に避けにくいものだと筆者は考えています。

人事担当者がよく抱える3つの矛盾

現場でよく聞かれる悩みを整理すると、次の3つに集約されることが多いです。

  • 「聞きたいけれど、踏み込みすぎるのが怖い」:体調や治療の状況を詳しく把握したい一方で、プライバシーへの配慮やハラスメントと受け取られる不安から、当たり障りのない範囲の質問にとどめてしまう
  • 「叶えたいけれど、約束できない」:本人の希望(勤務時間の調整、業務内容の変更等)を聞いても、他の従業員への影響や業務の代替体制が整わず、その場で答えを出せない
  • 「間に立ちたいけれど、専門知識がない」:主治医の意見と現場でできる配慮の橋渡しをしたくても、医学的な内容の解釈や、どこまでが合理的配慮の範囲なのかの判断に自信が持てない

これらはいずれも、人事担当者の努力や誠実さが足りないから起きているのではなく、「本人の内面」と「組織の現実」という、性質の異なる二つの情報を一人で調整しようとすることから生じる負担だと言えます。

真面目な担当者ほど、「一人でなんとかしなければ」になりやすい

筆者は公的職業紹介機関で持病・障害のある方の就職支援を担当するなかで、板挟みに苦しむ人事担当者ほど、「自分がなんとかしなければ」と一人で問題を抱え込みがちだと感じています。本人にも会社にも誠実であろうとする真面目な担当者ほど、両方の顔色をうかがう役回りを引き受けてしまい、結果として疲弊してしまうことが少なくない、というのが現場で繰り返し見る一般論です(件数や割合などの統計はここでは使いません)。

どちらの味方でもない第三者が入ると変わること

この板挟みの負担を軽くするために有効だと考えられるのが、本人にも会社にも肩入れしすぎない、第三者としての専門家の存在です(以下は想定される効果であり、断定的な保証ではありません)。

  • 本人の希望や状態を、専門家が丁寧に聞き取り、業務に関連づけた言葉として整理しやすくなる
  • 人事担当者は「代弁者」ではなく「調整の進行役」という立場に軸足を移しやすくなり、心理的な負担が分散する
  • 本人の希望と会社が実行できる範囲との間で、現実的な着地点を一緒に探しやすくなる

第三者が間に入ることで、人事担当者が一人で背負っていた「言葉にする作業」と「すり合わせる作業」を分担できるようになる、というのがこの考え方の核にあります。

一人で抱える場合と、第三者が入る場合の違い

板挟みの構造を整理すると、次のような違いが見えてきます(いずれも一般的な傾向として整理したもので、個々の企業・状況によって差があります)。

| 場面 | 人事担当者が一人で抱える場合 | 第三者(専門家)が間に入る場合 |

|---|---|---|

| 本人の希望の聞き取り | プライバシーへの配慮から踏み込みきれず、情報が断片的になりやすい | 専門家が体調・希望を丁寧に聞き取り、業務に関連づけた形で整理しやすい |

| 会社への説明 | 本人の意向をどこまで正確に伝えられているか、担当者自身が不安を抱えやすい | 整理された情報をもとに、会社側が判断しやすい形で共有できる |

| 主治医の意見との橋渡し | 医学的な内容の解釈に自信が持てず、対応が止まりがちになる | 医療知識のある専門家が、現場でできる配慮への「翻訳」を担いやすい |

| 心理的な負担 | 「本人の代弁者」「会社の代弁者」の両方を一人で兼任し、負担が集中しやすい | 役割が分担され、人事担当者は調整の進行役という立場に軸足を移しやすい |

こうして並べてみると、板挟みの負担は「担当者の能力」の差ではなく、「一人で複数の役割を兼任しているかどうか」の差から生まれていることが見えてきます。

「からだとこころのはたらく伴走支援」という選択肢

「からだとこころのはたらく伴走支援」は、本人側に立ちながら企業とも実務でつながる、という立ち位置を大切にしているサービスです。本人の気持ちを置き去りにしないことと、企業の現実的な事情を踏まえることの両方を同時に成立させようとする点が特徴です。看護師・公認心理師が間に入り、本人の状態の言語化と、企業側が実行できる配慮内容のすり合わせを、実務として伴走します。

人事担当者が「本人の代弁者」にも「会社の代弁者」にもならず、両者の間を専門家に橋渡ししてもらうことで、板挟みの負担そのものを一人で抱え込まなくてよくなる、という選択肢を知っておいていただきたいと考えています。

試験運用を終え、企業と一緒に「測れる知見」を積む段階です

この伴走支援は、試験運用を終えたうえで本格案内を始めたサービスです。いまは「〇社で導入」「満足度〇%」といった完成形の数字を並べる段階ではありません。成果を誇張せず、正直にお伝えします。

一方で、筆者はこれまでに日本難病ネットワーク学会などで現場の取り組みを報告してきた経験があり、今後は導入企業とともに、活動の記録や支援の変化を、学会等で共有できる形に整えていきたいと考えています。ポイントは、「うまくいった」と断定することではなく、現場で起きていることを丁寧に残し、検証可能な知見として積み上げることです。

板挟みが軽くなっているかを、企業と一緒に見ていくときの指標の例としては、次のようなものがあります(いずれも現時点の効果保証ではなく、今後の共同評価のたたき台です)。

  • プロセス:本人・人事・専門家の三者で、配慮事項や連絡ルールを言語化した記録が残っているか
  • 負荷の分散:人事担当者が一人で抱え込む面談・調整の回数や時間が、どう変わったか
  • 計画の運用:復職・定着の計画が「一度きり」で終わらず、見直しのタイミングが決まっているか
  • 早期共有:再休職や早期離職のリスクを、早めに共有・相談できた場面があるか

看護師・公認心理師としての臨床・支援の経験を土台に、一社一社の状況に向き合いながら、こうした記録を企業と一緒に積み上げていきたいと考えています。

【こんな企業には】規模・状況別のヒント

  • 「本人の希望を叶えたい気持ちと、会社の事情を守る立場の間で疲れている」人事担当者の方には:まず自分一人が代弁者になろうとしなくてよいことを知っていただきたいです。ご興味があれば、からだとこころのはたらく伴走支援の相談窓口からお気軽にお問い合わせください。
  • 「人事に任せきりで実態を把握できていない」経営層の方には:板挟みの負担が特定の担当者に集中していないか、一度確認してみることをおすすめします。専門家を交えた仕組み化のご相談だけでも承っています。
  • 「まだ具体的な困りごとが起きていない」企業の方には:問題が起きてから探すのではなく、事前に相談できる窓口を知っておくことが、いざという時の負担軽減につながります。

まとめ:板挟みは「兼任」から生まれる苦しさ

本人の希望と会社の事情の板挟みは、人事担当者の力不足ではなく、本来別々の役割を一人で兼任しようとすることから生まれる構造的な苦しさです。どちらか一方の代弁者になろうとするのではなく、両方の言い分を整理し、実現可能な着地点を一緒に探す第三者が間に入ることで、負担が軽くなる可能性があります。「からだとこころのはたらく伴走支援」は試験運用を終えた段階にあり、本人側に立ちながら企業とも実務でつながる立ち位置で、人事担当者が一人で抱え込まなくてよい選択肢を提供し、現場の記録を企業とともに積み上げていきたいと考えています。

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