makes momo
心理支援

「なんとなく調子が悪い」を気のせいで終わらせない。気圧と体調を記録する3つの視点

「今日はなんとなく体がだるい」「理由はわからないけど、しんどい」

こうした、はっきりした原因が見つからない不調を経験したことがある人は、決して少なくないはずです。天気や気圧の変化で体調がゆらぐと感じる人がいることは、一般的にもよく言われています。

結論から言うと、この「なんとなく」を放置せず、症状と気圧の変化をセットで記録しておくことが、自分の体調パターンを理解する第一歩になります。この記事では、気圧と体調の関係とどう向き合うか、3つの視点から紹介します。

今日、なんとなく調子悪い日
今日、なんとなく調子悪い日

なぜ「理由のわからない不調」はつらいのか

体調不良には、原因がはっきりしているものと、そうでないものがあります。特に難病や慢性疾患を抱えている場合、次のような事情が重なりやすくなります。

  • 症状の波があり、「良い日」と「悪い日」の差が大きい
  • 原因がはっきりしないと、周囲に説明しづらい
  • 「気のせいでは」「怠けているだけでは」と、自分自身を責めてしまいやすい

原因がわからないこと自体が、不調をより重く感じさせてしまう場合があります。だからこそ、「わからないなりに記録しておく」という姿勢が大切になります。

視点①:気圧と症状を「一緒に」記録する

まず基本になるのが、体調が優れない日の症状と、そのときの気圧の変化を一緒に記録しておくことです。

天候や気圧の変化によって体調がゆらぐと感じる人がいることは広く知られていますが、実際に自分にとってどのようなパターンがあるのかは、記録を続けてみないとわかりません。「気圧が下がったときにこの症状が出やすい」といった自分なりの傾向が見えてくると、事前の心構えがしやすくなります。

「おくすりとくらし」アプリには、気圧データ(Open-Meteoの気象情報と連携)と症状の記録を組み合わせて残せる機能があります。気圧のせいだと決めつけるためではなく、あくまで自分の体調を理解するための材料として活用することを想定しています。

記録の方法は難しく考える必要はありません。「今日は頭が重い、気圧は下がり気味」といった簡単なメモから始めるだけでも十分です。

視点②:記録そのものが、伝える力になる

「記録すること自体にどんな意味があるのか」と感じる方もいるかもしれません。ここで参考になるのが、患者自身が症状や体調を記録する「患者報告アウトカム(PRO:Patient Reported Outcome)」の考え方です。

デンマークで行われたIBD(炎症性腸疾患)患者を対象とした研究では、患者自身が記録した症状データを診療に活用することで、通院回数が14〜45%減少したという報告があります。この結果は、記録を続けることで患者自身が自分の状態をより的確に把握し、必要なタイミングでの通院に絞り込みやすくなったためと考えられています。

気圧と症状の記録も同じ発想で捉えることができます。「なんとなく」の不調も含めて記録しておくことで、診察のときに「先週のこの時期に、こういう症状が出ていた」と具体的に伝えやすくなります。理由がわからない不調ほど、記録という形で残しておく価値があります。

視点③:「気のせい」と自分を責めない

どれだけ記録を続けても、原因がすぐに特定できないことはあります。ここで大切なのは、「原因がわからない自分」を責めすぎないことです。

心理学者クリスティン・ネフ(Neff)のセルフコンパッション研究では、自分に対して厳しくしすぎることが、かえって物事を続けにくくする方向に働く可能性が指摘されています。反対に、うまく説明できない不調も含めて「そういう日もある」と一定の理解を示すことが、記録を長く続けるうえでの支えになります。

「なぜ体調が悪いのかわからない」ことに焦る必要はありません。わからないなりに記録を続けていくこと自体が、少しずつ自分自身の理解につながっていきます。

気圧×症状記録、始め方の具体的なイメージ

「記録した方がいいのはわかったけれど、具体的にどう始めればいいのかイメージが湧かない」という方のために、記録を続けるうえでの流れを具体的に整理してみます。

体調が優れない日

まずは「今日は頭が重い」「体がだるい」など、感じたことをそのまま短く書き留めます。あわせて、その日の気圧が「下がり気味だったか」「安定していたか」も一緒にメモしておきます。難しい数値を正確に覚えておく必要はなく、「なんとなく下がってきている感じがした」という感覚のレベルで十分です。

1週間〜数週間続けたあと

たまった記録を見返してみます。「気圧が下がった日に、頭が重くなることが多い気がする」といった、自分なりの傾向が見えてくることがあります。逆に、はっきりした傾向が見えなくても、それ自体が「気圧以外の要因も関係していそうだ」という気づきにつながります。

体調が優れない日が続いたとき

「最近こういう日が続いている」という記録があると、それ自体が「一人で抱え込まなくていい」と思えるきっかけになることがあります。記録は誰かに見せるためだけのものではなく、まず自分自身が状況を把握するための道具として役立ちます。

通院や相談の場面

記録をそのまま見せる必要はありませんが、「先週このあたりから調子が悪かった」と自分の言葉で伝える際の手がかりになります。理由がすぐにわからない不調ほど、記録という形に残しておくことで、あとから振り返りやすくなります。

このように、記録は一度に完璧な仕組みを作るものではなく、「なんとなく」の感覚を少しずつ積み重ねていくものです。うまく続かない日があっても構いません。気づいたときにまた書き足せばよい、くらいの気持ちで始めてみることをおすすめします。

こんな方には、記録から始めることをおすすめします

天気による体調のゆらぎを感じやすい方には

まずは気圧が大きく変化した日だけでもメモを残すことから始めてみるのがおすすめです。毎日きっちり記録できなくても、体調が優れなかった日だけ書き留めておくだけで、振り返りの材料になります。

通院時にうまく症状を説明できず悩んでいる方には

気圧と症状をセットで記録しておくことで、「あの時期、こういう症状が続いていた」と、診察の場でも具体的に伝えやすくなります。記録を見返しながら話すことで、伝え漏れも防ぎやすくなります。

「気のせい」と自分を責めがちな方には

記録は原因を断定するためのものではなく、自分の体調パターンを知るための材料です。まずは「なんとなく」の不調も否定せず、そのまま書き残すことから始めてみてください。

家族やパートナーと体調の波を共有したい方には

一人で記録を続けることが負担に感じる場合は、家族やパートナーに「今日は調子が悪そう」と一言メモしてもらうだけでも記録の材料が増えます。すべてを詳しく共有する必要はなく、無理のない範囲で始めることが長く続けるコツになります。

まとめ:わからない不調も、記録の材料にする

「なんとなく調子が悪い」という感覚を、気のせいで片付けてしまう必要はありません。

  • 気圧と症状を一緒に記録する
  • 記録そのものが、診察で伝える力になる
  • 原因がわからなくても、自分を責めすぎない

この3つを意識するだけで、理由のわからない不調との向き合い方が少しずつ変わっていきます。「おくすりとくらし」アプリの気圧データ機能も、そうした記録の材料のひとつとして活用してみてください。

著者について

安原奈那(やすはら なな)/makes momo

看護師・公認心理師。岡山県を拠点に、難病・慢性疾患を抱えながら働く方へのEAP(従業員支援プログラム)サービスを提供。約15年の臨床経験と、約8年の難病患者就職サポーターとしての相談員経験をもとに、医療と就労の橋渡しを専門とする。

参考文献

  • Appel, C. W., Pedersen, S. S., Nielsen, A. S., & Larsen, B. F. (2022). Telemedicine based on patient-reported outcomes in management of patients with inflammatory bowel disease in a real-life setting – a before and after cohort study. *Scandinavian Journal of Gastroenterology*, 57(7). https://doi.org/10.1080/00365521.2022.2041083(通院回数14〜45%減少という報告。視点②「記録そのものが、伝える力になる」でご紹介しています)
  • Neff, K. D. セルフコンパッション研究(視点③「『気のせい』と自分を責めない」でご紹介しています)

※上記2件は、気圧と症状の関連そのものを示す研究ではありません。それぞれ「記録を続けることの効果」と「自分を責めすぎないことの大切さ」を裏付ける研究としてご紹介しました。気圧と体調の関連については個人差が大きく、明確な機序もまだ特定されていないため、本文では断定を避けた表現にとどめています。

本コラムの情報は学術文献・実務経験に基づいていますが、個別の状況については専門機関へご相談ください。

関連する事業

おくすりとくらし(アプリ)

アプリと人の伴走で、服薬とくらしをやさしく支援

事業詳細を見る

関連記事